2月16日〜18日の3日間、白馬で行われた「第4回全国障がい者スノーボード選手権大会&サポーターズカップ」翌日の2月19日には、パラスノーボードチームのメディア公開合宿が行われ、平昌パラリンピックに出場が決まった成田緑夢24歳/LL2・左膝下麻痺/近畿医療専門学校)、小栗大地(37歳/LL2・右大腿切断/三進化学工業)が参加した。
前日までの大会は猛吹雪もあり厳しい天候となったが、この日は快晴の下、時折笑い声も聞こえるなど、リラックスした様子で10本ほどコースを滑走した。
国内唯一のパラスノーボード全国大会終わる
前日まで開かれた大会では、成田が男子膝下障害などの部で優勝し、大会3連覇。また小栗は男子大腿義足の部で優勝し、両選手とも好調な滑りを披露。
小栗は「昨日の大会はとにかく転ばないよう、安定した滑りを目指した。去年は攻めすぎて転倒してしまったので安全運転を心掛けた」と振り返る。
大会を終え、二人を指導する二星謙一ヘッドコーチは「成田選手の滑りはほぼ仕上がっている。技術の引き出しを増やしつつ、コース取りなどを指導したい。また、小栗選手はつま先側のターンと距離の短いセクションが苦手なのでそれらを重点的に指導したい」と今回の合宿の強化ポイントを語った。
小栗は今季から義足をチェンジ。昨年9月にニュージーランドで行われたパラスノーボードW杯以降、競技やコンディションによって関節部のパーツを使い分けている。
競技2種目のうち、傾斜のあるコースに設置された旗門(バンク)を滑走するバンクドスラロームでは主に可動域を狭めたパーツ、2名の選手が同時に出発してタイムを競うスノーボードクロスでは、主に可動域を広げたパーツを使用している。前者は横の動きが多いため、可動域を狭めることで板に力が伝わりやすく、後者は横の動きが多いため、可動域を広げて膝を曲げ伸ばししやすくするという。
前日の大会では「義足に慣れてきて、滑りながら身体を動かせるようになってきた」と手応えを感じさせた。 平昌パラリンピックでも、この新たな義足を携え戦いに臨む。義足には思い入れもある。
昨年12月に行われた日本障害者スキー連盟のキックオフ記者会見では、パラスノーボードの魅力について、「滑走の際は後ろ足の義足を見えるようにして、かっこいい競技だとアピールしたい」と語った小栗。この日もウェアの下から伸びた義足が白いゲレンデにきらりと光る。パラスノボーダーとしての誇りと自信を感じさせた。
一方、2016年の全国障害者スノーボード選手権大会でデビューし、いきなり優勝した成田は、パラスノーボード界にとって期待の星だ。今大会で連覇を果たし、すでに風格すら漂う。成田が注目を集めるのは、アジア人初のオリンピック・パラリンピック両大会出場を目指す選手であることも大きい。
成田はもともとスキーハーフパイプとトランポリンで夏季・冬季両方のオリンピック出場を目指していたが、2013年にトランポリンの練習中に起きた事故により、左足の膝から下に麻痺が残った。今回の平昌大会ではスノーボードでパラリンピック選手として初出場を決め、さらに2020年東京大会では陸上での出場を目指すマルチな選手だ。
成田はパラリンピック競技について、以前出場した陸上の大会で「最後にゴールした選手に会場から拍手が送られる光景に感動した」と語り、結果だけでない、スポーツ本来が持つ素晴らしさを学んだという。
「見る人の感情がより入るのがパラリンピックだと思う」と、平昌への見どころを語った。
オリンピック・パラリンピック、さらには夏季・冬季と様々な目標を掲げ競技に挑む成田の活躍は、パラスノーボード界、ひいてはパラスポーツ界全体にとって大きな力となるに違いない。
いよいよ、未踏の世界へ!
いよいよ平昌パラリンピック開幕まで残り3週間を切った。
合宿での過ごし方について小栗は「色々な滑りを試してまだまだレベルを上げる練習をしたい。調整に入るのは平昌に入ってから」と挑戦の姿勢を見せた。現在の課題はスタートセクション。「W杯では落差があるようにコースが作られていたので、平昌ではそれに対応できるよう、縦の動きをより強化したい」と意気込む。
一方、成田は「特に変わりません。いつも通りです」と普段通りの姿勢を貫く。好きな言葉は「目の前の一歩に全力で」。先の目標を掲げるよりも、毎回の滑りに集中するのだという。一歩一歩着実に未来を築いていくのが彼の信条なのかもしれない。
白馬での強化合宿は23日まで行われる。今大会から初めて正式競技となるパラスノーボード。両選手の活躍で、その幕開けを飾って欲しい。
(校正・佐々木延江)