2017スペシャルオリンピックス冬季世界大会・オーストリア出場に向け出発する日本代表の結団式・壮行会が3月13日、羽田空港で行われた。
障害のある人の国際大会は、パラリンピック、聴覚障害のデフリンピックなど知られているが、さまざまな大会がある。大会の多くは共通して勝ち負けの明瞭な競技スポーツを目指すが、スペシャルオリンピックスは、知的発達障害のある人のスポーツで、競う結果の順位を決めるよりも日常のスポーツに価値を置いている。
また、パラリンピックがイギリスやドイツなどオリンピック同様にヨーロッパ生まれなのに対し、スペシャルオリンピックスは、故ケネディ大統領の家族のために始めた、アメリカからのスポーツで、かつてアメリカでは障害者のスポーツといえばスペシャルオリンピックスというイメージを持っている人が多かったという。
大会はオーストリア共和国で17日から開幕し、24日に閉会式が行われるまで8日間行われる。107の国と地域から2700人のアスリートが参加、1100人のコーチ、3000人のボランティアが参加し、ウィーン、グラーツ、ローアモース、ラムサウなどの会場で8競技、1デモンストレーションが開催される。
結団式・壮行会の会場には、高円宮妃、スポーツ庁などの出席のほか、冬季オリンピック・フィギュアスケートの安藤美姫やサッカーの北澤豪など冬季オリンピックやサッカーワールドカップで活躍した選手も参加し、エールを送った。
日本選手団(団長・大和田誠)は、総勢81名(アスリート54名・スタッフ27名)で7競技に参加。この大会のために、2016年からスタッフによる会議や、長野、新潟、北海道での合宿が重ねられ、この日を迎えた。
障害のある人の権利や状況について考える機会でもある
在日オーストリア大使フーベルト・ハイッス氏は挨拶の言葉をつぎのように述べ、日本人とオーストリアのウィンタースポーツの交流が深く、スキーが長く楽しめるスポーツであることを伝えた。
「この大会は、オリンピック精神に基づいて競技を行うだけでなく、障害のある人の権利や状況について考える機会でもある。日本は、冬季オリンピックやウィンタースポーツの会場として数多く選ばれている。冬のスポーツの素晴らしい環境がある。その日本に、100年前にアルペンスキーを伝えたのが、オーストリアのレルヒという人(テオドール・エードラー・フォン・レルヒ)です。
オーストリアと日本の間には30もの姉妹都市がある。その大半がスキーの交流です」
長野パラリンピックのレガシー
壮行会後、食事会の前に写真を撮らせてもらったクロスカントリースキー日本代表。選手の一人、川本麻衣は選手団代表で決意表明をした。浜田翔は「この大会で最も楽しみにしているのは、ワックス・コーチに会うこと」だと話してくれた。競技を通じて知りあった現地在住の協力者が力強いサポートをしてくれるのだ。二人は普段は旭川でヘッドコーチの今野征大氏と共にクラブチーム「999AC」で活動している。
冬季パラリンピックで、知的障害の選手が初めて出場したのは長野大会(1998年)。その練習でも使用された富沢クロスカントリースキーコースが999ACのホームゲレンデとなっている。長野後、夏のシドニーパラリンピック(2000年)での「選手替え玉事件*」を経て、知的障害のクラスが冬のパラリンピックから姿を消したが、旭川では選手が今も練習を続けている。
オーストリアでのクロスカントリースキーのレースは17日と18日に行われる。
<参考>
スペシャルオリンピックス日本
選手替え玉事件:シドニーパラリンピック・スペイン選手替え玉事件