12月3日、IPCアイススレッジホッケーBプール苫小牧・最終日。2日間にわたるBプールの優勝争いはチェコの圧勝だった。
前日に日本は2−0でチェコに敗退した。同じ相手との2戦目は、早くに先制点を奪われ、第1、第2ピリオドでそれぞれ3点を失い6−0となった。第3ピリオドをなんとか無失点に抑えたが、チェコの成長と安定を印象づけた。
前日、中北浩仁日本代表監督は「膿を出し尽くした!」とし、その反省をもとにラインを変えて挑んだ、が、吉とはでなかった。チェコを相手に日本が一晩で全ての課題をクリアして力を発揮するには、基礎体力、精神力、技術力などまだまだ鍛えて行く必要があるようだ。
それでも多くの課題を得て前進したことは間違いなく、パラリンピックの舞台へ復帰するための新たな挑戦の一歩を踏み出した。
苫小牧を舞台とした世界選手権(Bプール)。結果、日本は4カ国中2位。目標としていた平昌パラリンピック最終予選(2017年10月)出場権の獲得と、平昌パラリンピック後のシーズンにAプールへの昇格が決まった。
中北浩仁監督は、「最低限の目標をクリアした」と話していた。当初、平昌に向けては、ロシアのドーピング違反問題の関係で4月の平昌プレ大会へ「Bプールからの繰り上げ出場の可能性がある」と考えていたが、その可能性は1位で通過したチェコのものになった。
選手不足の課題解消へ
中北監督は、2010バンクーバーパラ後の競技の取り組みの中で、奇しくも代表の活動を去ることとなってしまった上原大祐ら2名の有力選手を欠いた状態でチームを立て直してきた。ソチを逃し、ゆっくりではあるが、力を蓄えつつあるようだ。今大会でゴーリー・望月和哉の成長が見られたことも、チームを励ましている。
中北監督は「パラリンピック最終予選のホスト国になることもアピールしていきたい!」という。来年10月になる平昌パラリンピック最終予選の開催地がまだ決まっていない。
日本がまた開催地になることにより、スタッフとしての負担、注目の中で格上のヨーロッパチームを相手にしなければならないプレッシャーもあるが、何より選手不足解消の対策を続けることがつねに重要だった。
2020年・夏季パラリンピック東京開催を前に、障害者のスポーツに大きな注目が注がれるようになり、各地では発掘・育成のための体験イベントが開催されている。この機会にアイススレッジホッケーの選手も増やしたいと須藤などが全国のイベント会場を回っている。
開催国になることで、一人でも多くの選手候補者に本物の世界レベルへの挑戦の姿を見てもらうことで、日本代表チームへの参加を促すことができるかもしれない。それ以上にアイススレッジホッケーの魅力をどうアピールしたら良いのか?ということもある。
そう考えると、今回アットホームでスムーズな大会運営をもたらした、日本を代表するホッケータウン・苫小牧市の協力は、日本代表チームの強化と発掘に今後も重要な力となってくれるかもしれない。
ミックスゾーンで大会について語ったあと、キャプテン須藤悟は「足がなく、頭が良く、お金がある人を知りませんか?!」と、記者たちに尋ねていた。さらに今回イギリスチームに女子プレーヤーがいた、女子はどうか?と尋ねたところ、「女子はGKかな。プレーヤーはパックを怖がらない人であれば!」と前向きに考えているようだ。アイススレッジホッケーでは女子プレーヤーも認められている。女子選手がいることで、チームが活気づくことがあるかもしれない。
いずれにせよ、現実は前に進みながらもまだまだ厳しいことがあらためてわかった。
会場には熱心なスタッフや長野パラリンピックからの揺るぎない心を持つファン、多くのメディアが駆けつけていたものの、スタンドは空席が多い。
日本代表チームは大会の機会を活用して、さらに多くの人に知ってもらい、新たな選手を見つけ、育てていく途方もない課題が横たわっている。
ホッケーの街で行われたIPCアイススレッジホッケー世界選手権・Bプールが終わった。競技運営、雰囲気ともに素晴らしかった。苫小牧のボランティア、親身になって応援するファンの存在により、海外からの参加選手もリラックスして滞在を楽しんでいた。
写真・山下元気