第5幕、開会式後半に入り「パラリンピックのレガシー」をテーマに、リオパラリンピック委員会会長のカルロス・アルスラ・ノズマンと、IPC(国際パラリンピック委員会)会長のフィリップ・クレーヴァンが挨拶した。
ノズマンは「リオパラリンピックの歴史を作るのは、アスリート、ボランティア、そしてここにいる観客全員だ」と話し、観客はその言葉に拍手で応えた。一方、ノズマンがブラジル政府の協力に対する感謝を表明すると、会場からは大きなブーイングが起こり、スピーチが一時中断される場面も見られた。クレーヴァンはスピーチの中で、難民選手団に対し、「彼らは最も希望を与えてくれるアスリートだ」と述べた。最後にブラジル大統領のミチェル・テメルが開会の宣言をすると、会場からはまたもブーイングが起こった。
第6幕は、私たちに「視覚」について問いかける内容となった。光の爆発が起こると、会場の照明が落とされ、観客たちは一時視覚を失った。次の瞬間、視覚障害者が使用する白杖を持つパフォーマーが登場。ステージ上に何本もの大きな白杖の光が現れた。その後、ステージ全体に大きな目のイメージが映し出され、渦となって形を変えた。イコライザーを表すプロジェクションも映し出され、視覚以外の感覚にもっと意識を向けることの重要性を伝えるパフォーマンスになった。
盲目のダンサー、レナタとオスカーは、ブラジルを代表する作曲家ヘイト・ビラロブの音楽に合わせてバレーを踊った。二人がスクリーンに触れると、触感が視覚化され、視覚障害者が普段触感から得ている情報が表現された。
第7幕では、リオパラリンピックの公式ロゴマークとしても使用されているピストグラムによって、パラリンピックの競技種目がアニメーションになった。巨大なピストグラムが書かれた白い板が、黒い棒を並べた装置の中に入ると、ピストグラムがアニメーションとして動き出すという演出。今回ピストグラムが使用されたのは、ピストグラムが国境や年齢を超えたコミュニケーションのツールとしてこれまで親しまれてきた、という理由からだ。その後、パラリンピックのシンボルである赤、青、緑のオブジェクトがステージ中央に設置され、盛大な花火が打ち上げられた。
第8幕は、身体に障害のある息子の「サッカーがやりたい!」という願いを叶えるため、アレクサンドラ・ファレイロスが始めたプロジェクトが紹介された。そのプロジェクトは、身体に障害のある子どもとその親がバンドを介してつながり、「親子で一人のプレイヤー」としてサッカーをするというもの。
プロジェクションマッピングにより現れたサッカー場を、パラリンピックシンボルの旗を持った10人の障害を持つ子どもたちが、父親とともに入場した。パラリンピックシンボルの旗は、ブラジル国旗の横に高らかと掲げられた。
第9幕のテーマは「テクノロジー」。両足に義足をつけたアミー・プルディが、ドイツの会社が開発した産業用ロボット「クーカ」とともに華麗なダンスを披露した。途中、クーカがプルディにもっと複雑なダンスをするよう要求すると、プルディはその要求に応え美しいダンスを披露。一方、プルディがクーカに同じ要求をするとクーカはその要求に応えられず、会場からは笑いが起こった。
第10幕は聖火リレー。河合純一などが繋いできた聖火が、マラカナンスタジアムにともされた。途中、走者の一人マルシア・マルサルがバランスを崩し転倒するアクシデントもあった。しかし、スタッフの支えで再び立ち上がると、会場からは今日一番の声援が送られた。その姿に一部の海外メディアは、「彼女の転んでもまた立ち上がる姿は、パラリンピックを象徴する出来事だ」と賛辞を送った。マルサルは1984年のニューヨーク・アイレスベリーパラリンピック陸上200メートルで金メダルを獲得するなどしたブラジルを代表するアスリートだ。
式の最後は、ダンサーがサンバのリズムに合わせてステージを埋め尽くした。
観客もサンバのリズムに合わせて体を動かし、盛り上がりの中開会式は幕を閉じた。
(取材サポート:井上香澄)