OXに見た夢
夏が中休みしたような、少しだけ涼しいと思える日に千葉のOX本社を訪ねた。あたりを見渡すと高い建物が無く、のんびりとした雰囲気に包まれた場所に車いすの看板に白い2階建ての事務所がある。事務所の脇を通って駐車場に車を入れる。あまり町中では見られないマニアックな車と、一見ノーマル風のバイク。廃材置き場には車いすのフレームが見える。見慣れた町工場とは違う。ただ者ではないにおいがぷんぷんしてくる。事務所を訪ねると、シンプルなどこにでもある事務所だ。奥の応接室に通され、山口さん(社長)と話をした。やはりついついバイクの話になってしまって、楽しいのだが話を車いすに戻して聞いていると、ここの人達は車いすを作っている事は作っているが、対象物の問題ではなく、物作りをおもしろがっている気がした。話の後、工場を案内してもらったのだが、エレベータにも通路にも至る所に工夫の跡が見える。車いすのパーツをそれぞれ違った場所で製作している。それぞれの担当の人は、みんないい顔をして働いている。どの部屋も見ているだけでわくわく楽しくなってくる、そんな工場だ。山口さんにOXの歴史を聞きながら順々に回る。 フレームを作っている場所、生地専門の場所、それぞれの場所に思い出がびっしり詰まっている。そんな中、離れのような部屋に通された。それほど広くない部屋に試験用の機械が所狭しと置かれている。高校生の頃だったか、技術屋にあこがれていた僕は、バイクの修理工場や金属加工の工場、鉄工所なんかによく出かけていたが、こんな風景は見たことがない。検査担当の人が、そのとき動いていなかった機械をわざわざ動かしてくれた。すると、高いところから吊られた車いすがでこぼこ道をえんえん走り出した。ふと気がつくと、僕は回り出した車輪を見つめていた。それはまるで、OXの物作りに対する真摯な姿勢と、とどまる事を知らない夢が弾んでいるようだった。
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/ BBS
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