8月25日(水)選手団の出発まであと2週間となった。早稲田高校のプールへ河合選手と寺西コーチ、酒井選手らの様子を見にいった。早稲田に到着したのは、18時30分、すでに選手たちは18時から練習を始めているはず。地下鉄をおりると、外はもう暗くなっていた。彼らの夏はこれからなのに、もう陽が短くなっているのがちょっと寂しい。テレビで見る、アテネの陽差しも、何となく秋らしい色に感じる。 いつも彼らが練習で使っている25メートルの室内プールには、河合選手を昔から取材している地元静岡の静岡朝日テレビ・スポーツ担当のクルー、河合さんのガールフレンド(?)オリンピック選手らが来ていた。 ジャパラから1週間が経過した。寺西さんの目の下には隈ができていた。大会でのタッピングの失敗から、寺西さんは思い切った計画にでた。叩く位置を25センチ長くしたのだ。無駄に泳がせないためだという。その試みを、昨日くらいから実行し始めていたのは、ひとつの賭けだった。外野のわたしは、もう少し近いところで確実に壁を蹴り返していったほうが、選手は確実に頑張れるのではないか?などと考えてみたりする。しかし、彼らにはそんなことはわかっているはず。勝つための覚悟の賭けなのだ。
さて、「タッパー」の役割というのは、本来、マラソンやアルペンスキーの伴奏者に等しい。伴奏者といえば、パラリンピックでは選手のパートナーであり、同じ競技者という印象がある。パラリンピックの不思議波力のひとつに、伴奏者の存在がある。いい伴奏者とは、どのように出会うのか、など、話題は多くのメディアもとりあげてきた。伴奏者について言えば、その重要性は誰もが想像がつく。しかし、ブラインド水泳の「タッパー」は、これまで、そうした自覚があっただろうか? 世界中のブラインド水泳を見渡せば、タッパーと選手のすばらしい出会いもあると思うが、日本でパラリンピックの実際の練習を見る限りは、一人の選手と対等に競技しているというより、コーチが何人かの選手のタッピングを担当しているようだ。(もちろん、これはわたしの勉強不足かもしれない。一人ひとりのタッパーは真剣に競技に参加している思う)
寺西さんは、アテネがはじめてのパラリンピックになるが、じつは河合選手とは13年も一緒に競技の世界で練習してきたパートナーだ。けして言葉にはださないけれど、寺西さんは、役割の重みをいま感じとっているのだろうと思う。 河合さんも、寺西コさんの勝負をきっとわかっている。彼らは対等であり、一緒にプレーする選手なのだ。
海外のブラインド・スイマーはどんな練習をしているだろう。タッパーと選手の関係はどうだろう? そして、世界の選手たちの中で、河合さんが勝ってきた理由は? ふたりの練習の様子を見てふとそんなことを思った。
【佐々木】
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