視覚障害者柔道レポート・第1回
視覚障害者柔道は、03年秋に開催された第18回全日本視覚障害者柔道大会の結果を受けて、アテネパラリンピックの出場候補選手7人(男子6人、女子1人)が決定した。
候補選手は、04年5月をめどに、パラリンピック委員会により、日本代表選手として正式決定される予定だ。
パラリンピックの視覚障害者柔道は、障害の程度によるクラス分けはなく、オリンピック同様に体重別(男子は、60kg、66kg、73kg、81kg、90kg、100kg、100kg超の7階級)で競われる。アテネ大会では、男子は73kg級以外の全ての階級に日本の代表選手が出場する。また、アテネ大会から、女子の柔道競技も開催される。女子の柔道人口はまだ少ないが、日本からは1選手が出場する予定だ。
代表選手は、5月と8月に合同合宿するスケジュールだが、それ以外の期間は、選手それぞれがアテネを目指して、自主トレーニングを続ける。
今回は、候補選手2人にアテネへの抱負などをインタビューした。
●「攻めの柔道を目指す」 〜81kg級・加藤祐司選手〜
81kg級の加藤祐司選手(25)は、パラリンピックについて、「一度行くと病みつきになると聴いたので、楽しみにしています」と語る。
加藤選手が、柔道を始めたのは中学生の時。中学校で所属した柔道部は、小人数しか部員がいない部で強くはなかったが、加藤選手自身は、柔道の勝負で勝つ楽しみを感じていた。高校からは、本格的に柔道に取り組むようになり、パラリンピックに出たいという気持ちも持つようになったという。
しかし、アトランタ大会の時は国内で予選負け、シドニー大会の時はかなり上位まで勝ち進んだが、代表選手には届かなかった。アテネ大会は、加藤選手にとって初めてのパラリンピックとなる。
加藤選手は、あんま・針・灸の免許を取得しているが、さらに技術を磨くため、現在も勉強を続けている。学生を続けながら、道場に通い、アテネへ向けてトレーニングを積んでいくつもりだ。
「柔道は、技をかけることと、技を受けることがあるんですが、掛けられた技を耐えるのが苦手。急に苦手を克服することは難しいので、作戦としては、投げられる前に投げる。攻めを先に取っていきたいです」と加藤選手。
得意技は、内股。アテネでは、攻めの柔道が目標だ。
●「金メダルをねらう」 〜60kg級・広瀬誠選手〜
60kg級の広瀬誠選手(27)にとっても、パラリンピックへの出場は、アテネ大会が初となる。ただ、広瀬選手は、「パラリンピックだからということはなく、どんな大会でも、対戦相手に勝ちたいです」と話す。
広瀬選手の柔道との出会いは、視力が悪くなる前のこと。中学生の時に所属していたバレーボール部の先輩が、高校で柔道部に所属し、黒帯をとっていた。それを見て、「俺でも黒帯をとれるかもしれない」と柔道を始めた。きっかけは、たわいもないことだったが、「好きになって、柔道にハマってしまいました」という。
広瀬選手は、パラリンピック以外の国際大会には、何度か出場した経験がある。しかし、金メダルは、まだ獲得していない。パラリンピックでは、これまでと同じ60kg級で出場するため、過去に負けた経験のある相手と対戦する可能性も高い。
「過去に負けた経験のあるキューバの選手は上手いし、強い。攻めきれないうちに技を掛けられてしまいました。そういうターゲットとしている選手がいるので、対戦相手の長所、短所をつかんで、戦略を立てて勝負したいです」と広瀬選手。
これまでは東京で、あんま・針・灸師として仕事をしていたが、春からは、故郷の愛知県で、あんま・針・灸師を養成する教員となる。仕事の転機を迎えた今年、アテネでは金メダルをねらう。
【取材 河原由香里】