パラフォトニュース
記事掲載日:2004/02/04

パラリンピアンの横顔 その1・大日方邦子

2月1日に行なわれたスーパーGで、日本チームから金メダリストがふたりも誕生しました。大日方邦子選手(LW12/2)と東海将彦選手(LW3/2)。この栄えある勝者ふたりについて、少し詳しく報告しましょう。

 大日方選手は、1998年長野パラリンピックと2002年ソルトレイク・パラリンピックのメダリスト。3歳のときに遭った交通事故により、右脚を失い、また左脚にも重度の障害を負っています。このような基本的なプロフィールは、長野パラリンピック以来すでに何度も報じられているので、ここでは最近の彼女について書かせていただきます。

 現在、強化指定選手のトレーニング場所となっているのは、長野県の菅平高原パインビークスキー場です。シーズン中、ほぼ毎日のようにトレーニングを行なえる環境が、伴一彦チーフコーチとチームスタッフの皆さんによって整えられています。大日方選手はそのトレーニングにできる限り多く参加するために、麓の町に家を借りました。冬の間は、ほとんど「長野県人」というわけです。東京で生まれて横浜で育った彼女ですが、先祖は長野県の、しかも現在の冬の住まいからほど近いあたりにいたといいますから、不思議な縁もあるものです。ちなみにスキー場近くには、漢字違いの「大日向(おおひなた)」という地名もあります。
 冬の間、仕事はどうしているかというと、勤務先であるNHKがスキー選手としての活動に理解を示し、有給休暇や特別休暇などをうまくやりくりして、トレーニングに集中できる環境を用意してくれました。ディレクターとして番組づくりを任される立場にある彼女の抜けた穴は、同僚の皆さんがカバーしてくれています。そのような有形無形の支援に応えるには、レースで良い結果を出すしかありません。今回の金メダルは、そんな同僚の方々へ感謝の気持ちを伝える、最高の手土産となることでしょう。
 金メダルを獲得したスーパーGの滑りは、圧巻でした。まるでイキのいい男子選手がひとりだけ混じったかのように思えたほどです。チェアスキーフレームとスキー板の性能をフルに生かし、キレの良い高速ターンを連続させるその滑りを見た瞬間、勝利を確信しました。2位以下を実測で7秒以上も引き離す圧勝となりましたが、それも当然の結果だと思います。ちなみに、この日の大日方選手のタイムは、男子LW12クラスに入っても銅メダルに届くほどでした。志賀高原で行なわれたチェアスキーチャンピオンシップで思ったような滑りができず、調子を落としたまま遠征に出ることになった大日方選手。ワールドカップでも、本来の実力とはかけ離れた滑りで、なかなか調子を取り戻すことができずにいました。しかし、世界選手権前の最後のレースで2位に入り、浮上のきっかけをつかんだようです。そして、今回の金メダル。これでもう大丈夫でしょう。残り2種目でも、きっとまた男子を脅かす滑りを見せてくれるはずです。

 原稿がだいぶ長くなってしまいました。東海選手の話は、次回のレポートでお届けします。

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★パラフォト用特別レポート 第2回/この特別レポートでは、オフィシャルレポートでは伝えきれない内容をお届けしたいと考えています。よろしくお付き合いください。


【堀切】


※写真は、ニコン提供の最新デジタルカメラD2Hにより撮影されています。

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