障害者アルペンスキー世界選手権の開幕が、いよいよ迫ってきました。開会式は30日、そして翌31日には男女ダウンヒルで熱戦がスタートします。世界選手権に先立って行なわれているワールドカップでも、日本チームは絶好調。この勢いをさらにパワーアップさせて、より一層の大活躍を見せてほしいものです。
ちなみに、ワールドカップでは3クラス(「立位」「チェア」「視覚障害」)に統合してレースを行なっているのに対し、世界選手権はクラスごとの表彰となります。わかりやすく言うと、たとえばLW2(片脚で滑るクラス)とLW6/8(片ストックで滑るクラス)は、ワールドカップでは同じ立位クラスとなりますが、世界選手権ではそれぞれ別個にレースを行ない、表彰されるのです。またチェアスキーも、ワールドカップでは1クラスですが、世界選手権では障害の種類と程度によって3クラスに分かれます。つまり、それだけメダル獲得のチャンスが増えるというわけです。
それでは、世界選手権の事前情報として、メダル争いに加わってくるであろう日本チームの有力選手を紹介しましょう。
【男子立位クラス】
東海将彦(LW3/1)
日本の「秘密兵器」として、昨年のワールドカップに初参戦。2年目の今シーズンは、ついに表彰台の中央に立ちました。しかも翌日のレースでも勝ち、現在、波に乗りまくっています。脊髄損傷で下肢に障害があるとはとても思えない正確なスキー操作は、見る者を驚かさずにはおきません。
阿部敏弘(LW6/8)
ソルトレイク代表からは外れていたものの、もともと実力は世界レベル。前回の世界選手権でも、銅メダル2個を獲得しています。今シーズンもワールドカップ1戦目でいきなり表彰台に上がるなど、かなり調子が良さそうなだけに、好成績が期待できます。
井上真司(LW6/8)
本業はお寺の和尚。試合になっても自分を見失うことなく、つねに安定した力を発揮するのは、やはり仏の教えを実践しているからでしょうか。まだ世界大会でのメダル獲得はありませんが、そろそろ一発やってくれそうな気がします。
三澤 拓(LW2)
昨春、中学卒業と同時にニュージーランドに留学し、夏の間もたっぷりと滑り込んでいるため、練習量はチームでもダントツ。中学時代に比べ、身体もガッチリと出来上がってきて、滑りの力強さが大幅に増しました。世界の競合たちを相手にどこまで通用するか、注目したいところです。
【男子チェアクラス】
長谷川順一(LW10)
昨シーズンあたりから急激な成長を見せ、今シーズに入ってますます速さを増してきました。今、もっとも勢いを感じさせる選手です。障害の重いクラスとは思えない、すばらしくキレのある滑りが持ち味。引退した志鷹昌浩選手の跡を継ぐ、チームの盛り上げ役でもあります。
森井大輝(LW11)
昨年のワールドカップで2位に入賞。スキー板の走りを目一杯生かすその滑りは、海外の選手からも注目を集めました。おそらく天性のものと思われるバランス感覚が、モーグル競技で磨かれ、そしてチェアスキー操作に生かされているようです。すでにワールドカップで初勝利を挙げ、ただいま絶好調。世界選手権での活躍が楽しみです。
谷口 彰(LW11)
ここ数年、不本意なシーズンが続いていましたが、今季は完全に調子の波をつかんだようです。本来の持ち味であるターン前半の大胆な倒し込みに磨きをかけつつ、繊細なスキー操作をも自分のものにしています。ワールドカップで2位になったことも、世界選手権に向けての大きな自信につながったことでしょう。
鈴木猛史(LW12/2)
まだ15歳という若さながら、実力はすでに国内トップレベル。昨年の遠征には、国際スキー連盟の年齢規定に達していなかったため参加できませんでしたが、今季いよいよ世界デビューです。そのスピード感あふれるダイナミックな滑りは、新時代の到来を予感させるほど。しかも、1本滑るごとに進化しているようにさえ見えます。
【女子立位クラス】
佐々木如美(LW6/8)
ソルトレイクでは、あと一歩のところでメダルを逃し、悔しい思いをしました。昨シーズンのヨーロッパカップで2位に入ったことが、飛躍へのステップとなるよう期待しています。ただ、この冬は地元秋田になかなか雪が降らず、練習量が不足ぎみだという点が少々気がかりではあります。
青木辰子(LW10)
スピード大好きの「弾丸姐さん」。スキー板のキレとズレを絶妙にコントロールし、スムーズなターンを仕上げるテクニックは見事です。実力的には、つねに表彰台をねらえるはず。今回の遠征では、まだあまり力を発揮できずにいるようですが、国内トレーニングで順調な仕上がりを見せていたので、そろそろアクセル全開になるでしょう。
大日方邦子(LW12/2)
長野でもソルトレイクでも、決めるべきときにはきっちりと決めてきた選手。昨年のワールドカップでも、日本チーム唯一の優勝を果たしています。とくに今シーズンは、トレーニングの質も量も充分。青木選手同様、今回の遠征ではまだ不発のようですが、徐々に調子を上げていくタイプなので、これからのレースが楽しみです。
【写真・文:堀切 功】