リオパラリンピック日本代表選手団の結団式、壮行会、記者会見が8月2日、東京都内のホテルで行われた。
総勢225名(選手127名、競技パートナー15名、役員83名)で構成されたリオパラリンピック日本代表選手団が紹介され、団旗が鳥原光憲JPC(日本パラリンピック委員会)会長から、団長・大槻洋也、主将で車いすバスケットボールの藤本怜央(SUS)、騎手で車いすテニスの上地結衣(エイベックス)へと授与された。
冒頭で主催者挨拶に立った鳥原会長は、1週間前に起きた相模原障害者施設殺傷事件に対し、「我々はスポーツの振興と、障害者の自立と社会参加から共生社会の実現につなげる活動を推進している。半世紀を超える歴史を経て、障害者スポーツの発展とともに障害に対する社会の認識も高まり、共生社会への変革が一段と進みつつある今日、凶悪な事件を断じて許すことはできない」と抗議の意を表明し犠牲になられた方々にへの哀悼を込めて全員で黙とうを奉げた。
来賓祝辞を馳浩文部科学大臣、遠藤利明東京オリンピック・パラリンピック大臣が述べたあと、リオデジャネイロ出身のアンドレ・アラーニャ・コヘーア・ド・ラーゴ駐日ブラジル大使館特命全権大使は「皆さまがブラジルに行かれましたら、ブラジルにとって『統合』と『インクルージョン』というのがブラジル人にとってキーコンセプトであることがご覧いただけると思います。我が国は『分裂よりも調和、分離よりも統合がすぐれている』という考えを前提とする国です」と、ブラジル人の誇りを持って紹介してくれた。
長いあいだ障害者スポーツの「スポーツとしての振興」が望まれてきた日本で、今大会は所管がスポーツ庁に移り、初めてのパラリンピックとなる。また、次回2020年の開催国として参加する。チームジャパンとしての意義を伝えるパラリンピックを披露して東京へとつなげたい。
壮行会の乾杯は、スポーツ庁長官・鈴木大地氏の「頑張るぞ、日本!」から始まり、大槻団長の「チーム・ジャパン!」という掛け声で終了した。支える人々からの「応援」をテーマにした映像の紹介や、パラリンピック出場を目指す障害のあるキッズ3名による「選手の活躍が僕らの希望」を伝えるエール、オリンピアンを代表する元バレーボール選手・大山加奈からもエールがあった。
パラスポーツの良さを伝えたい 〜記者会見で〜
記者会見には、大槻洋也団長、櫻井誠一副団長、中森邦男副団長、主将の藤本怜央(SUS)、旗手の上地結衣(エイベックス)が出席した。
大槻団長は「自身は6回目のパラリンピック。2020東京でパラリンピックの競技会場が満杯になるためには、リオでどれだけ素晴らしいパフォーマンスが見せられるかがカギだろう。楽しい、素晴らしいというのを選手たちが表現してくれることを望む」と話した。一方で、「金メダルランキング10位」という厳しい目標を課しており、「10位をとらなければ、東京ではこれ以上の成績はとれない」と。
また、金メダル10個獲得への期待がかかる選手として、木村敬一(競泳)、鈴木孝幸、陸上の山本篤、車いすテニスの国枝慎吾、上地結衣を挙げた。
相模原障害者施設殺傷事件に触れて、上地は、
「障害者のスポーツの良さを通じて、まだまだ伝えきれなかったことがあると思いました。自分たちのプレーや活躍を通して、良さを伝えなければならない」と話した。
会場には、朝日小学生新聞の記者も来て何度も質問の機会を得ていた。
小学生の「私達小学生にどのようなことを伝えたいですか」という質問に答えて藤本は次のように話していた。
「小学校3年の時の事故で右足を失って、小学生から障害者です。父から、できないことを考えるのではなくできることを考えろと言われ育ちました。スポーツと出会った時、自分というものを手に入れました。過去の記憶に感謝して、スポーツで戦っている姿こそが自分であることを感じています。テレビや新聞で、リアルタイムに試合を観てもらいたい」
上地も「これまではなかなか障害者のスポーツを見たことのある人は少ないかもしれない。最近は、体験したことがある人も増えている。見るのと、体験するのでは違う。私自身、体験会などで元気をもらった。車椅子テニスは、健常者も障害者もできるテニスです。私達を目にする機会があったら、みてほしいと思います」と話した。
第15回パラリンピック・リオ大会は歴史上初めての南アメリカ大陸でのオリンピック・パラリンピックとなる。
ロンドン大会を上回る170か国以上の国と地域が参加をして、9月7日から18日までの12日間に渡り、22競技528種目が行われる。
(記事・石野恵子、写真・編集 佐々木延江)