10月10日、横浜市青葉区にある日本体育大学健志台キャンパスで、東京都と株式会社WOWOWの連携で特別授業「PARA-SPORTS ACADEMY」が、体育学部社会体育学科(担当:野村一路教授)の学生に向けて行われた。聴講後、2020東京パラリンピックを目指す日体大生に会うことができた。
3人は、それぞれのきっかけでパラリンピックに出会い、今年、日体大に入学した。陸上部でともに活動しており、競技として取り組み始めたばかり。
これからの冬季練習で、基礎力を養い、体幹を鍛えるトレーニングを開始する。
3人のパラリンピック競技へのきっかけ
女子の兔澤明美は「辻紗絵先輩から聞いて」ときっかけを話してくれた。
義足を調整しに義肢装具士を訪ねたところ、大学の先輩でもあるリオパラリンピック400メートル銅メダリスト辻紗絵に出会った。
辻は右腕欠損のハンドボール選手だったが、パラリンピックに向け陸上競技に転向。日体大で練習し、わずかな機会を着実に刻んでリオでのメダルを手にしていた。
兔澤は「高校の頃からジャパンパラや関東選手権に出場していました。辻先輩に話を聞いて、本格的にパラリンピックを目指して競技として始めようと思いました」という。100メートルと走り幅跳びで2020東京を目指している。
奈良県出身の山手勇一は「3年は短い、自分はまだ世界との試合に出場できていない」
関西の発掘プロジェクトに参加したことがきっかけだった。高校時代は野球部だったことから、陸上競技の投てき種目を勧められ、槍投げ、砲丸投げに取り組んでいる。
「より本格的に競技を目指そうと日体大に進学しました。2020まで3年という時間は短い。この夏、パラリンピックを目指す選手はみんな海外の大会に出ているが、自分はまだどの大会にも出場できず、一人練習している」と、焦る気持ちを話してくれた。
上腕に障害のある鈴木雄大は、高校まで地元の静岡県でサッカーをしていた。体育の先生や陸上部顧問の先生から静岡でパラリンピック選手発掘プロジェクトがあると聞いて、記念のつもりで参加した。そこで、世界的に活躍するトップ選手の山本篤や若手の佐藤圭太に「一緒に陸上やろう!」と誘われた。
「自分に可能性があるなら、やってみたい」と、決まっていた地元での就職をやめて日体大に進学した。100メートル、400メートル、走り幅跳びで2020東京を目指す。
2020までの3年間に向けて
3人は、日本パラ陸上競技連盟の育成選手となっており、12月10日からドバイ(アラブ首長国連邦)で開催されるアジアユースパラゲームズへはじめての日本代表入りを目指す。
アジアユースパラゲームズは、2009年東京でも開催された。多くの選手がパラリンピックを目指すきっかけになっている。現在主力をめざし活躍する若いパラリンピアンの多くが、初めて日本代表を経験した登竜門の大会でもある。
日本代表に選ばれ国際大会に出場するには、各クラスでの記録が国内3位以内に入らなければならない。2020東京出場に向け、照準を合わせていくためのスタートを切ることになるだろう。
兔澤選手は「私の上に2人のライバルがいて、私は3番手です。国内3位では、世界での勝負はできません。記録を伸ばしてアジア大会(2018・ジャカルタ)へ行き、さらに2年後の世界選手権(2019・ロンドン)、そして3年後の東京を目指します」と話していた。
<参考>
アジアユースパラゲームズ2009東京(オフィシャルメディアチーム・ウエブサイト)
http://www.paraphoto.org/tokyo2009/
辻は200Mで7位「もっともっと早くなりたい」(by 細川高頌)
http://www.paraphoto.org/?p=11448
走り幅跳びで山本篤が銀「ライバルがいるからこそ楽しめる」(by 細川高頌)
http://www.paraphoto.org/?p=11617
女子400M辻紗絵が悲願の銅メダル(by 三浦宏之)
http://www.paraphoto.org/?p=11162